賢いというかなんというか

我が子が拍手を覚えたのはいつのことだっただろう。最初は両手をパチパチしているだけだっだけど、今ではテレビをつけたときやお散歩の準備を進める僕らに気づいたときなど、自分にとって喜ばしいことが起きたときにパチパチをするようになった。いつの間にやら拍手の意味を理解したらしい。正面に座る僕の両手を掴んで左右に振り、強制的に拍手をさせられたりもする。すごいなと思う。
で、先日、我が子が突如高速ハイハイをしながら隣の部屋へ侵入した。その方向には僕の布団が敷いてあり、さらにその先には僕の目覚まし時計やら何やらが置いてある。テレワーク中に「それはお父さんの大事な時計だからダメ!」という妻の声がたびたび聞こえてきていたので、それを目がけて突進しているに違いないと思って追いかけた。ら、急停止して振り返り、僕の顔を見て笑いだした。これってアレだよね、時計目がけて突進してると思わせておいて、自分のことを相手にしてくれないお父さんを誘い出したってことだよね。むむむむむ。
1歳になったばかりとは言え、もう立派な人間だ。こっちもいろいろと気を付けないとな。言葉遣いとか、態度とか。

1歳

数日前に我が子が1歳になった。我が子は本来であれば6月中旬あたりが予定日だったから、半月程度早めにこの世に出てきたってこと。出てきたというか出されたというか。そういうこともあるし、そもそも歳の取り方とは人それぞれ違うものだから「単なる目安だよね」としか思わないんだけど、それでもやはり1歳なわけで、そこは素直に「めでたいな」と思う。おめでとう、我が子。
1歳になると餅を背負うじゃない。一升の餅を。僕が1歳のときも背負わされてさ、重くて後ろに倒れそうになったの。それを何度もやらされるもんだから泣いたらさ、風呂敷を前に回してくれてさ、そしたらバランスが取れるようになったのよ。そうなると泣く理由は無いからニコニコしながら歩き回ったらさ、そこにいる皆が笑顔になったんだよね。って何が言いたいのかというと、僕が1歳の頃にはもう歩いてたぞってこと。我が子は今高速ハイハイができるようになったくらい。それってアレなのかね、半月の差なのかね。まぁいずれにしても歳の取り方は人それぞれだから気にしてないけどね。
で、妻に「餅買わなきゃ」と言ったら「餅を買っても食べないから米を一升でいいと思う。」と言われた。一升のパンを背負わせる人もいるみたいだからそれでいいかと思えた。米だ米。でも米だけだとちょっとアレだから、米と牛肉でも背負わせたいな。ミディアムレアで。

熊とおやじ

数週間前、NHKスペシャルで『ヒグマと老漁師』という番組をやっていた。知床のルシャという地域には野生のヒグマがわんさかいるけれど、そこではそのヒグマに襲われることなく、毎年のように漁がおこなわれていると。武装も何もしていないのになぜ襲われないのかいうと、「おやじ」と呼ばれているリーダー格の漁師さんがとてもしっかりしてるから。うん、ざっくり言い過ぎたけど、そのおやじはね、若かりし頃に熊を殺すことに違和感を覚えてね、それからというもの、その熊たちと共存する道を選んだの。具体的にはどうしてるのかというと、まず、熊に餌は与えない。そして熊が近づいてきたら目をそらすことなく「コラッ!」と声をあげる。確かこれだけだった。んで映像で見る限り、おやじに「コラッ!」って言われるとホントに熊たちは逃げてくのよ。
その番組を見てからというもの、それが気に入ったんだろうね、妻は我が子に向かってことあるごとに「コラッ!」と言うようになった。もちろん冗談で。僕が我が子を前向きに抱っこして妻の背後に立つと、妻は突然振り向いて「コラッ!」と言う。我が子はビクッとしてから笑う。ドアの隙間から妻を覗くと「コラッ!」と言う。壁際から死角にいる妻を覗き込むと「コラッ!」と言う。そのたびに我が子は大笑い。妻はこれを「知床の熊とおやじごっこ」と名付けた。
なお、我が子を熊に見立ててからというもの、それまでは食事中に我が子がダイニングテーブルの天板をバンバンと叩くと、それに合わせて「酒持ってこい!酒持ってこい!」とアテレコ(アフレコ?)をしていた妻が、天板を叩くと「鮭持ってこい!」と言うようになった。熊だけに。いつまでもこんな平和な一家でいられればいいなと思う。