フィリピンパブにて

今から15分ほど前に、有楽町と新橋の間あたりにあるコリドー街がナンパの聖地であることを知った。かなりのものらしい。齢46の僕ですが、実は、というほどのものでも無いけれど、人生において一度もナンパをしたことが無い。未経験。他には風俗も未経験なんだけど、その風俗つながりで思い出した話があるので書いてみよう。僕がまだお菓子屋さんで働いていたときの話。

横浜駅西口の地下街にあるケーキ屋さんに配属されていたことがあるんだけど、地下街の組合の回覧板的なものに屋形船に行きましょう的なチラシが挟まれていたことがあった。お店同士で親睦を深めるやつね。参加希望者の氏名を書く欄が空欄になっていたので、店長(女性)に「行かないんですか?」と聞いたところ、行かないと。どうもそういうのは苦手で、今まで一度も参加したことが無いとのこと。いやいやいや、そういうの大事でしょうと。周りのお店は仲良さそうにしているのにうちの店だけスルーされているというか冷たくされているというかそんな空気だった理由はこれかと。全然親睦深めてないんだなと。なので「じゃあ僕行きますよ。」と告げて名前を書いた。
で、屋形船当日。ひとりで集合場所へ向かい、船に乗りこみ、テキトーな場所に座った。最初はよそよそしい雰囲気だったけど、酒が入るにつれ他のお店の方々が、「いや~、〇〇さん(お店の名前)が来てくれるなんて嬉しいよ!」と言ってくれた。ほれみろと。こういうの大事なんだからなと、店長の顔を思い浮かべた。
なかなか楽しい感じで会は終了し、さて帰ろうかと思ったら、かなり上機嫌な〇樽(寿司屋)の店長が「もう一軒行こうよ!行きつけがあるからさ!!」と言いながら僕と某ケーキ屋の店長を捕まえてタクシーに乗せた。で、向かった先は横浜では有名な風俗街というか、その近辺。行きつけの店とはフィリピンパブだった。こういうところに来るのは初めてなので緊張した。横に露出の多いフィリピン人が座っておもてなしをされるんだけど、どうしていいのか分からんので「どうして日本に来たんですか?」なんていうビミョーな話に終始した。「日本人みんな優しい」と言っていたのが印象的だった。勝手にカラオケのデュエット曲を入れられてマイク持たされるのは迷惑だったけど。で、途中でトイレに行った際にあることに気づいた。ジーンズの後ろのポケットに入れておいた財布が無くなっていた。驚きつつもどうしていいのかわからず、とりあえず席に戻って某ケーキ屋の店長を呼び出し「財布がなくなりました…」と伝えると、その店長は「そういう店だったのか…」と険しい顔をした。険しい顔はしたけれど、特に何もしてくれなかった。10こくらい年上なのに。非常にドキドキしつつも席に戻り、警察に通報すべきか、いやいや、この雰囲気を台無しにするわけにはいかないな、なんてことを考えながら少し後ろにのけぞったら、指先に革の手触りがするものが当たった。僕の財布だった。椅子のすぐ後ろに落ちてたみたい。暗いからわかんねーんだよ。すぐにケーキ屋の店長に「ありました」と言ったら頭を殴られた。なにせ初めてのジャンルのお店だったので警戒心が強くてだな、盗まれたもんだとばかり思っていた。決めつけって良く無いね、という話。フィリピン人もみんな優しかったよ。おわり。