思い出

昨年秋に舌癌の手術を終えた頃、癌の告知をされて自分の死と向き合うようになってから頭に浮かんだことは、自分の周りの大切な人たちに対して自分は何かしてあげてこれただろうかということや、家族と一緒にどこに行こうかなとか何を食べようかなというような、自分に近しい人たちに関することばかりだった。「モノやお金はあの世へは持っていけない」と言うけれど、本当にモノやお金のことは全く頭には浮かばなかった。他の人はどうかは知らないけれど、自分にとって大切なものは家族であり、身近にいる友人たちであり、どうやら貯金では無いらしい。彼等彼女等との思い出を作ることが自分にとっての財産であり、その思い出はあの世にも持って行けるものなのだと理解した。
あれから約半年が経過したけれど、この半年で思い出を作れているかというと、なかなか難しいと答えるしか無い。仕事をしているとき以外、つまり週末のことだけれど、週末に何をしているのかというと9割方は写真を撮りに行っている。写真を撮りに行くことは楽しいことなので僕にとっては良いことだけれど、僕の家族や、いつになるかはわからないけれど臨終間際の僕にとってはどうなんだろうな?なんてことを思う。家族や大切な友人たちと共に過ごす時間をもっと作った方が良いのだろうと思える。
思い出っていいことばかりでは無いけれど、これから作る思い出は、笑顔溢れるものにしたいなと思う。いろんなことに挑戦もしてみたいと思う。あのときの僕の頭に浮かんでいたことを「後悔」と呼ぶのだろうと思うし、臨終の際には笑顔でいたいからね。