ガンプラを思い出す

僕が小学生の頃、機動戦士ガンダムのプラモデル、所謂「ガンプラ」が爆発的にヒットした。どこへ行っても売っていない。発売日に行っても買えない。やっと見つけたと思ったら武器セットとゴックしか残っていないという散々な状況だった。それくらい、僕らはガンプラに夢中になった。自転車で行ける場所へならどこへでも行った。隣町は当たり前。市を超えることもザラだった。おもちゃ屋というおもちゃ屋をはしごしてガンプラを探し回った。
ある日、友達がいいことを教えてくれた。隣町にあるおもちゃ屋にガンプラが置いてあると。しかも武器セットやゴックでは無く、ガンキャノンやザクが置いてあると。僕らは心躍らせて、放課後に自転車を飛ばした。お目当てのおもちゃ屋に着くと、確かにガンプラは置いてあった。置いてあったけど、欲しくも無いし安くも無い他のプラモデルと一緒にビニールひもでグルグルにまとめられて置いてあった。抱き合わせ販売というやつだ。300円のガンプラが欲しいのに、1,000円以上出さないと手に入らない。小学生である僕らには成す術も無かった。落胆したその足で、家の近所のおもちゃ屋に向かった。そこは馴染みのおもちゃ屋で、おばちゃんにはいつも良くしてもらっていた。オアシスのような場所だった。僕らはそこで愚痴を吐いた。欲しくも無いプラモデルと一緒に売ってるなんてひどいと。小学生が思いつく程度の罵詈雑言をそこで吐き続けた。そしたらいつもは優しいおばちゃんが、僕らに向かって鬼のように怒りだした。僕ら子供には分からないような話を織り交ぜながら、大きな声でどなり続けた。話している内容はよくわからないけれど、とにかくはお店をやるというのは大変なことで、抱き合わせ販売も悪いことでは無くて、それに文句を言うヤツのことなんかもう知らんというような内容だと受け取った。怒りっぷりがとにかくすさまじくて、いつものおばちゃんは影も形も無くなってしまった。僕らはショックを受けたまま店を出た。
それから数日後、お店に行ってみたらそこにはいつものおばちゃんがいた。何事も無かったように話しかけてくれた。おばちゃんとお話をして過ごした。

なんか、マスクが抱き合わせ販売されてたんでしょ?そんなニュースをちらほら目にするけれど。そのニュースを見かけるたびに、あの日のことが思い出されるんだよね。