ファン心理

事務所に着くなり部下たちが昨晩行われたフィギュアスケートの結果についてあれこれと話しはじめた。毎週月曜日にはその週末におきた出来事をひと通り話さないとならない事情でもあるのかねと思うくらいに月曜の朝はうるさい。早く仕事はじめろよと。それはいいとして、仕事をしながらその話がちょいちょい僕の耳を通して脳に刻まれて行くのだけれど、滑りを見て泣いたとか、あなたのお母さんとは気があうとか言うわけだ。滑りを見て泣いたというのはその言葉の通りでは無く、その選手のこれまでの頑張りやら壁にぶつかったことやらもろもろの背景を知っているからこそ泣けるわけで、たまたまテレビを見かけただけの一般視聴者にとってはどこに感動ポイントがあるのかなんてわからないだろう。僕も右に同じだけれど、言ってみればその「ファン心理」というものは僕にも分かるわけで、たとえばアイドルになりたい女の子が無事にアイドルグループへの加入が決まったときなど心から感動したりする。小さい頃からアイドルを夢見てオーディションに応募するも落ちる日々が続き、憧れだけではどうにもならないことに気づいて歌とダンスを勉強し、次のオーディションに応募するもやっぱりダメで心が折れかけ、それならばと養成所に入って鍛錬を積むも後から入ってきた後輩たちに次々と追い抜かされ、自分の能力と年齢との戦いに不安を感じる日々を過ごし、ある日サプライズでグループへの加入が発表されたりすれば僕も涙が浮かぶわけよ。諦めないで頑張ってきてよかったね!と。なので「なんでこんなブスがアイドルやってんだろ」とか言っちゃダメなの。その裏にはとてつも無い努力があるはずだから。