フリーフォント

表情のある日本語フォントが欲しくて「日本語フォント」で検索をしたら、日本語フォントは日本語フォントでも、フリーフォントばかりが上位表示されてしまった。昨今ではとても美しいと思える日本語フリーフォントも散見されて、それをフリーで配布するだなんてその開発のご苦労のほどが伺えるんだけども、フリーとは言えどもどこからどこまでが「フリー」なのかが分からないものが多いと言うか、明示されているとしても、果たしてどのフォントなら商用での使用が可でどれがダメなのかなんてことをいちいち覚えていられないので、弊社としてはフリーの日本語フォントは使用しないようにしている。
なんてエラそうなことを書いたけど、かつては僕もフリーフォントを作っていた人間で、フリーで配布していたフォントに添えた「Read Me」には「商用でのご利用の際には必ずご連絡ください。」なんてことを書いていた。今思えばなんつーめんどくさい利用規則を設けてたんだろうな、なんて自戒の念にかられている。売るのかタダなのかのどちらかにしないと分かりにくい。使う側の立場というかシチュエーションというか、そのあたりをあまり意識できていなかったなと。

もう20年くらい前の話になるのかもしれないけれど、僕が作った英文フォントがMicrosoftのOfficeシリーズのアイコンとして採用された。Wordであれば「W」の文字が、Excelであれば「E」の文字が使われた。「採用された」とは言っても僕のところには何の連絡も無いわけで、でも僕はそのフォントの配布の際には商用での利用の際には連絡が必要である旨のRead Meを付けているわけで、それに反することをされたので、Microsoft社のお問い合わせフォームから連絡をした。ちょっと連絡無いんだけどと。それから数週間後、我が家に英文のFAXが届いた。そもそも我が家のFAX番号をどこで調べたのかも分からんのだけど、その内容は、連絡ありがとうと。フォントについて開発者全員に聞き取り調査をおこなったけれど、あなたのフォントを使用したという事実は無い。そもそもフォントというものは似かよったものが大量にあるものだと。このように我々は調査した。あなたからの意見があればぜひ聞かせてほしい。ただし英文でな。のようなものだった。署名欄のそれはMicrosoftのものでは無く、アメリカの弁護士事務所のものだった。ネットで検索したらなんだかすんごく大きなところだった。僕は別に金よこせと言っているわけでは無く、商用利用にも関わらず連絡をくれなかったことがいかがなものなのかなと思っただけだ。でも今思えば、僕のフリーフォントをダウンロードしたデザイナーが、もはやどこで入手したフォントなのかも覚えていないまま使っちゃったんだろうなってことは推測できる。そして多少は同情できる。僕はその弁護士事務所には連絡はしなかった。というか英文で反論するだなんてとてもできないので、世間的にはあのアイコンには僕のフォントは使用されていなかったことになっていると思う。反論しなかったのだからそれでいいんだけど、「O」も「E」も「W」も「P」も何もかもが僕が作った特徴的なフォントと同じ形状になるだなんてとても不思議なことだなと思う。なんつーかこう、僕自身はフリーフォントからは距離をおきたいなと思えた。そんな思い出。

っつーことでかなり脱線したけれど、表情のある商用の日本語フォント、どこかに無いかしら。