JAFを呼ぶ

昨日、二子玉川にあるショッピングセンターでの買い物を終え、地下駐車場に停めた車のエンジンをかけようとしたところ、かからない。何度キーを回してもかからない。シフトレバーはパーキングに入ってるし、サイドブレーキは関係無いだろうけど引いてあるし、フットブレーキも踏んでるし、なんだかわからないけどエンジンがかからなかった。エアコンは動くしETCも認識しているのでバッテリーでは無いとは思うものの、エンジンがかからんことにはどうにもならんので、JAFを呼ぶことにした。したけれど、ここはショッピングセンターの地下駐車場。まずはこの施設の許可が必要だろうし、そもそもJAFの車、駐車場に入れんのか?という疑問もあり管理室を探すことに。

場内を歩いていたら、カートを押しながら歩く制服姿の男性が。あれは係の人だろうということで声をかけて呼び止め、引きつった顔のままかくかくしかじかと説明をした。その眼鏡をかけた優しそうな男性は見た目そのままに優しい方で、僕の懇願をしかと受け止め、「ちょっと社員に相談してみますね。」と告げて立ち去った。まじか、社員じゃ無かったのかと。素晴らしい受け答えをしてくださったので完全に立場ある方だと思っていた。その方の戻りを待つ間にJAFへ電話。15分ほどで到着するというので少し安心。JAFで15分って早いからな。僕がJAFのオペレーターさんとお話をしている間に先ほどの心優しきお兄さんが戻ってきて、妻となにやら会話をして立ち去った。後で聞くと、JAFはフツーにこの駐車場に入ってきてくれればOKで、JAFの駐車料金はもちろん、対応をしている間の僕の車の駐車料金も発生しないので安心してくれとのことだった。オーバーした分の駐車料金は当然支払うものだと思っていたので、神かと思えた。なんて客思いなショッピングセンターかと。

渋滞に巻き込まれて少し遅くはなったものの、JAFの車がやってきた。レッカー車では無くサービスカーだった。降りて来たのはキラキラとした目が印象的なお兄さんで、見た目はもちろんのこと、お話の仕方もとても好感が持てる方だった。優しくて頼りになる感じ。
まずはバッテリーを確認してくれたけど、やはりと言うか、バッテリーは問題無し。ではセルモーターがイカれてるのかもしれないってことで、お兄さんが棒でセルモーターを叩き、それと同時に僕がセル(キー)を回してみることに。これも残念ながら効果無し。これは困ったぞということでリレーを確認したり差し直したりしてもダメ。原因が特定できないのでレッカーしか無いなということで、お兄さんが電話でレッカーを手配。ただしレッカー車は高さ制限があるために地下駐車場には入れないので、まずはお兄さんが乗ってきたサービスカーで僕のアメ車(ジープ)をけん引して地上に出すことに。とその前に、けん引して場内を走ること、そして出口を出たあとはレッカー車との連携もあるので本来は禁止されている右折での出庫をおこないたい旨を伝えに駐車場の事務所へ。ついでにけん引中は速度が遅く他の車の迷惑にもなるだろうということで、事務所側から先導役をひとりつけていただきたい旨の交渉にも成功。お兄さん、すばらしい。
車に戻りけん引のためのロープをつけようとしたら、僕の車にはけん引のためのフックが付いていないことが判明。車の下に潜っていただき、なんとかロープを固定できる場所を確保。ではお兄さんのサービスカーにもロープをつけようかなという段階で、僕は僕で、けん引される準備のため、僕の車のシフトレバーをニュートラルの位置に入れたところで違和感が。レバーがスカスカなのよ。DからNの間がスカスカ。それを見たお兄さん、すかさず「あっ!」と声を出し、再度車の下に潜りこんだ。何やらガタガタと音を立ててから出てきて「エンジンかけてみてください。たぶんかかります。」と。セルを回すとなんとエンジンがかかったじゃあーりませんか。原因は…なんだっけ、名前は忘れたけれど、シフトレバーから繋がっているワイヤー(?)の途中にあるプラスチック製の部品が破損しており、それが原因でエンジンがかからなくなっていたと。で、お兄さんが車の下に潜りこんで手動でシフトをDに繋げることでエンジンがかかる状態にしてくれたと。なので今は前進はできるけどバックはできない状態であり、このまま自走はできるものの危険な状態にはかわりは無いので、どちらにしてもレッカーですねということに。ただ自走はできるようにはなったので、けん引していただくこと無くそのまま地上に出ることにした。出口にいた係のおじさんには「すみません、故障しておりましてここを右折して…」と言うと「聞いています」と言わんばかりに右折をさせてくれ、少し離れた路上に車を停めてレッカーを待った。

レッカーを待つ間に雨が降ってきた。その雨はまたたく間に豪雨になり、平たく言って「やべぇ状態」になった。東京アメッシュを見たら紫だった。僕らのいる場所は、東京アメッシュで言うところのウルトラ超豪雨を示す紫色の場所だった。そのド真ん中でレッカーを待っていた。そんななかでもJAFのお兄さんはサービスカーと僕らの車とを往復してくれて「いまそこまで(レッカー車が)来てますからね!」と元気づけてくれたりした。なんて素晴らしい方なんだと。車のケアだけで無く心のケアまでしてくださるとは。助手席にいる妻も何度も僕に話しかけてくれて不安を取り除いてくれた。みんな優しい。

数十分後、超絶な豪雨のなかレッカー車が到着した。レッカーのおじさんは雨のなか傘もささずにお兄さんと打ち合わせをして、僕の車をレッカー車に乗せてくれた。僕らはレッカー車の助手席に乗ることになるんだけど、JAFのお兄さんは「自分はもう濡れてますから」と言いながら傘を差し出してくれて、助手席まで誘導してくれた。なんなんだこのホスピタリティーは。
レッカー車に僕の車を積み込んで、JAFのお兄さんとはそこでお別れ。レッカーのおじさんと共に、僕の車がいつもお世話になっている北千束のリンエイさんへ向かった。
リンエイさんへはあらかじめ二度ほどお電話を入れておいたんだけど、直近の状況を伝えた方がいいよねということで、レッカー車の助手席から三度目の電話。あと20分で到着予定だということと、故障の原因は電気周りでは無くシフトレバーから繋がってるプラスチックの部品の破損だということをJAFのお兄さんが突き止めてくれたことを伝えた。すると電話の向こうから「あぁ、その部品なら在庫があるのですぐに修理は終わりますよ。今日乗って帰れます。」というまさかのお返事が。豪雨のなか濡れながら帰ることを覚悟していたので感激した。
リンエイさんへと向かう道すがら、レッカーのおじさんは楽しい話をしながら僕らを笑顔にしてくれた。レッカーだけで一日に7件も出動してるんだって。サービスのお兄さんだと一日にだいたい12件は出動していると。JAFって凄いね~。そして、そんなにたくさん故障してるんだね。知らなかった。よくレッカーする車はアレだとか、こんな車は水(雨)に弱いんだよねーとか、いろいろな知識を得られた20分だった。

リンエイさんに到着すると、いつもお世話になっている方々二名が既に工場でスタンバイしてくれていた。感激。大雨のなか、(シフトが)Dに入っているので前進しかできないはずの車をなぜかバックでレッカー車から降ろし、直後に前進して工場に入れてくれたリンエイさんは凄い。「ビショビショだから着替えてくる~!」と言いながら二階へと駆け上がり、すぐさまリンエイTシャツを着て降りてきて作業に取りかかってくれた。
「これですよ。」と言いながら見せてくれた部品は 鼻くそ 豆のように小さなもので、こんなものが割れたくらいで動かなくなるんだから、車って緻密というか精密というか、すげぇなぁと思えた。っつーか金属で作ればいいのにとも思えたんだけど、ド素人の僕には分からぬ何かしらの事情があるんだろうね。で、瞬く間に修理を完了させてくれた。下手をしたら、レッカー車よりも僕らの方が先にその場を後にできそうなほどの速さだった。

ってことで、苦闘すること3時間半、無事に帰路につくことができた。
駐車場のお兄さん、JAFのお兄さん、駐車場の出口のおじさん、レッカー車のおじさん、リンエイのおふたり、みんなに救われた一日だった。みんな優しくて、プロフェッショナルで、僕と妻は恵まれてると思えた。

部品の破損はいつ起きてもおかしく無いものだった。それが駐車場から出ようとしたときに発覚したということは、駐車場に停めたときに壊れたということで、もしそれが数分前におきていたとしたら駐車場に車を停めようとしたにも関わらず停められなかったわけで、ということは駐車場内に大渋滞を引き起こしていたということで。それが数十分前に起きていたとしたら、路上に大渋滞を引き起こしていたということになるわけで。故障そのものは良からぬことだけど、そのタイミングはベストなものであり、そのあたりも恵まれていると思えた。悪いなりにもベストなタイミングだったなと。妻が隣にいてくれたことも心の支えになった。そこは大きかったかな。みんなに感謝な一日だった。