入院23日目

昨日の午後、喉に開けている空気孔の蓋が閉じられた。閉じられたとは言っても先生曰く「完全には閉じていない」とのことで、話をしたり咳をしたりすると喉に何重にも重ねて貼られたテープの隙間から空気が漏れる。話をするときはそのテープを押さえてくれと言われたので、おそらくは空気が漏れてちゃダメなんじゃなかろうかと思える。この辺り、あとで誰かに確認しておくつもり。

昨日の15時くらいだったかな、看護師さんが走ってきて「歯科に呼ばれました!」と告げられた。先週の木曜日に耳鼻科の先生から治療の依頼をされた歯科がようやく動き出してくれた。時間に空きができたんだろうね。ってことで急いで準備をして別の棟にある歯科に行ってきた。
歯科の先生によると、手術の際に耳鼻科の先生の手により左の奥歯3本が抜かれたと。ただそのうちの2本は歯の上の部分が抜かれただけで、根っこの部分は残っていると。なのでその2本を抜かなければならないんだけど、それを抜くタイミングが難しいと。なぜなら耳鼻科の先生からはまだこれから放射線治療や抗がん剤を使う可能性も残っていると言われており、放射線治療を行うということはそれよりも前の段階で歯を抜く必要があると。放射線治療は早めに始めた方がいいだろうとは思うものの、抜歯する時間が取れるのが早くとも再来週になってしまうと。で、抜歯をしたらそこに特殊な入れ歯を入れる必要があって、でも入れ歯はこの病院では作れないので他の病院に行ってもらう必要があると。通常であればここから近い医科歯科大学か日大を紹介することになるけれど、何度か通う必要があるから自宅の近くに特殊な入れ歯を作ることができる病院があればそこでも大丈夫なので、次回の抜歯の際までに教えてくださいと言われた。知らんわ。
放射線治療の話は耳鼻科の先生からも聞いていて、今回切除した舌やら他の部位の生検の結果によっては追加治療として放射線、もしくは抗がん剤と放射線をセットで行う必要があるとのこと。僕もその結果が出るまで落ち着かない不安な気持ちでいるんだけど、今日までまだ結果は出ていないの。で、歯科の先生が言う「放射線治療をするならそれよりも前に抜歯をしないとならない」ってのは、放射線を浴びせると歯が抜きにくくなるんだって。そのメカニズムは知らんけど、とにかくはそういうことらしいから先に抜く必要があるみたい。で、歯を抜くにも歯茎を切ってから抜く必要があるとか言われたり、他にも色々と細かな説明をされてさ、座り心地の悪い椅子に座って長いことそれを聞いてたら、なんかもう疲れちゃった。

入院してからこれまでの間、いろいろとさ、頑張ったり我慢したりしながらようやく退院が見えてきたかなと思っていたのに、また身体にメスを入れるとか他の病院に行かないとならないとか言われてさ、なんかもう疲れちゃったよ。もちろん先生は僕のためを思っていろいろと頑張ってくれているんだからそこは感謝なんだけど、なんかね、その説明をきっかけとして、僕の中に隠れていたこれまでの諸々の蓄積がドバッと表面に出てきてしまったように思えた。前の妻と離婚した時と似てるなと思えた。あの時は世の中が経済的に落ち込んだ頃だったと思うんだけど、弊社も御多分に洩れずその影響を受けてね、収入の軸となっていたクライアントさんが離れて行ったのよ。だから会社の貯金はどんどん減っていく。その穴をどうにかしないとと思って、調べて、考えて、ってことを何ヶ月か繰り返してようやく「これだ!」と思える仕事を見つけてさ、それを当時の妻に伝えたの。「これからこんなことをやってみようと思ってるんだ。」って。そしたら開口一番「私はやだ。」って言われてさ、なんかこう、僕は何のためにこんなに頑張ってるんだろうとか、それまでは頭の中に入ってもいなかったような過去の出来事が色々と湧いてきて、その全てに対して疑心暗鬼になったというか、僕は何のために結婚してしてるんだっけかと疑問に思うようになって、そしたら精神的にも少しおかしくなってさ、仕事中に突然「今死にたい」と思えるようになった。隣に部下が座っていたから実行には移さなかったんだけど、いなかったらヤバかったと思う。で、その半年後に離婚したの。それと似た感覚をさ、歯科の説明を受けてから感じ始めた。何のために頑張ってるんだっけ?って。だから昨晩はちょっとおかしな精神状態っつーかヤベえ状態で過ごしたんだけど、少し寝て、朝日を浴びたらちょっと前向きになれた。そもそも今回の入院は気力で乗り越えてるだけなんで、気持ちが戻ればまた頑張れると思う。

今は食堂でこれを書いている。部屋に戻ってリハビリと筋トレでもするかなと。