癌になって思ったこと

舌癌が発覚したのが2016年の7月。ステージは2と診断され、2であればすぐにどうこうなってしまうものでは無いと知っていたので安心はしていたけれど、それでも癌には違いないわけで、「もしかしたら死ぬのかな?」なんてことも頭の中には見え隠れしていた。
そのころの日記にも書いたけれど、病室のベッドの上で天井を見上げていた僕の頭の中に浮かんでいたのは「僕はこれまでにどれほどのことを経験できたのだろうか?」ということと、「周りの人に優しくしてこれたかな?」ということ。不思議とモノやらお金やらのことは浮かばなかった。「生きているうちに爪痕を残してやる!」とかそういうのもどうでもいいみたい。おそらくはそのときに頭に浮かんだ「経験」と「愛」が、僕が今生を生きていくうえで大切なものなんだろうなというか、今生での目的なのかなと思えてね。この世で得られる財産って、おそらくは「体験」なんだよ。良くも悪くもそれをあの世に持ち帰るがために生きているんだろうね。
で、今はどんな心持ちで毎日を過ごしているのかというと、やっぱりね、忘れちゃうんだよね。あのとき、視野が狭くなった状態で感じたそれらのものは僕のコアな部分なんじゃなかろうかと思っているんだけど、日々の生活のなかではどうしても忘れてしまうことが多くてね。それが人間だと言われればそれまでだし、生きていくうえでは物質的なものも大切になってくるけども、あれから一度の再発(ステージ1)と一度の転移(ステージ3)を経験しているわけで、なんつーか、「もう一度、生き方を考え直した方がいいぞ。」と言われているような気もする。本当に大切なものだけを見つめて生きていればその他のものは勝手についてくるものなんじゃないのかな、とかね。たぶんそうなんだけど、それもまた勇気がいるのよね。信じきれるか否か、かな。