幸せとは

僕が通う大学病院は各階に受付があり、そこで診察の受付を済ませてから各科に向かい、各科の入口前にある椅子に座って呼ばれるまで待つスタイル。ずっとお世話になっている耳鼻科は3階にあり、手前には眼科がある。数か月前からお世話になっている歯科は4階にあり、奥には精神科がある。
歯科の予約を入れてある日、エスカレーターで4階に向かっていると、僕より前に乗っているひとたちの後ろ姿を見るだけで、誰が歯科へ行き、誰が精神科へ行くかが100%分かる。受付で並んでいると横入りをされたり、受付をしている最中に真横に来て受付のお姉さんに話しかけたりする。歯科の前の椅子に座って待っていると、バタバタバタとスリッパを鳴らして走ってきて「新幹線!」と言う。ふと精神科の方に目をやると、短い距離を延々と往復している男性や、天井の方向をじっとみつめる女性がいる。
精神科の受診を待つ方々に共通点があるとすれば、皆、視野が狭いということだろうか。自分の世界に入りこんでいるように見える。自分の欲望を優先し、他人のことは目に入っていないように見える。そんな姿を見ていると「幸せそうだなぁ…」と思える。幸せかぁ。その形はいろいろで、人の数ほどあるものだと思うけど、なんかこう童心そのもののように見えて、僕は何か大切なものを忘れて育ってはいやしないだろうかと思えた。