入院2日目(手術)~6日目

手術の立ち合いには、姉だけでは無く、急きょ妻も来れることになった。ふたりとも11時前あたりを目指していたようだったけれど、看護師さんがいつもより強めに部屋のドアをノックしたので何事かと思ったら、手術の開始時刻が早まったとのこと。10:30に手術室に向かいますと言われた。姉とは一目会うことができたけれど、妻とは会えなかった。せっかく育児の合間をぬって駆けつけてくれたのに。妻ひとりを部屋に残すわけにはいかないので、姉には部屋に残って妻と合流するようにお願いし、手術室へは僕ひとりで向かった。
なにせ同じ病院での3回目の手術なので、手術の流れにはこちらも慣れている。ベッドに仰向けになり、手術用の寝間着を脱がしてもらい、指に酸素のモニターを付け、胸に何やら機械を付ける。心電図かね、知らんけど。で、全身麻酔用のマスクを付けたら一瞬で気を失うわけだけど、今回はマスクを付けてからが長かった。ずいぶん長いこと意識があったけれど、遠くから「安西さーん!安西さーん!手術終わりましたよー!」と声をかけられたことで、あ、いつの間にか落ちてたのかと気が付いた。で、そのときの気分から察するに、今回の麻酔はこれまでに経験したもののなかで最も強いものだったんだなと思えた。そのままゴロゴロとベッドを引かれて部屋に戻ったけれど、手術台からベッドに移された際のことを一切覚えていない。麻酔している最中に乗せられたのか?で、部屋に戻ってから少しして妻と姉が部屋に入ってきた。久しぶりに妻に会った。妻はいつも笑顔だから安心する。本当にこの人と出会えて良かったと思う。ただ後から妻に聞いたところ、その時の僕は目の焦点が合っていないような感じで、まだ麻酔から完全に覚めていないんだろうなと思っていたそう。僕は僕で、先生がふたりに手術の報告をしていたことや、妻が持ってきた我が子の写真を見てかわいいねと言っていたことやら部屋の中で起きていることは分かってるんだけど、それが深く意識のなかに落ちて来ないというか、どこか表面的なもののように感じられていた。ちなみに手術をした箇所に痛みは無い。それよりも、首と腰がとても痛かった。手術の際に無理な姿勢をさせられていたんだと思う。毎朝5時に起きてやっていたストレッチも台無しだね。ベッドも硬いので、数日間はそれとの格闘に費やす時間の方が多かった。けっこう広い範囲を切ったみたいだったけれど、僕には見えないし、あまり興味も無いし、手術をしてから3日後くらいかな、そのあたりで初めて縫い目の全容を見た。喉のあたりから耳の後ろにかけての切り口と、その切り口の途中から下方向に向けて鎖骨のあたりまで切られている。特に気にしてはいないけれど、これ、退院してからも目立つんだろうなと。切除したリンパと脂肪はもうもちろん無いわけなので、そのあたりの首もへこんでるし。だから体重で言えば500gくらいは痩せたことになんのかな?まぁいいや。
で、今日までずっと患部よりも喉の痛みの方が強くてね、それと戦っていた。首は手術の翌々日には気にならないようになり、腰は看護師さんから和布団を敷きましょうかと提案を受け、その通りにしてもらったら痛みはいくらか和らいだ。なんかやけに柔らかい敷布団なの。もうちょい硬ければよさそうなんだけど、ま、贅沢は言っていられないからね。で、喉の痛みね。これはやはり麻酔科の仕業なんだろうね。仕業って言い方は悪いな、たぶん僕の喉の形が悪いんじゃなかろうかと。空気を入れる管を通す際に喉に傷がついたりして、それが1週間くらい痛むから、食事をしたり水を飲む際に大変なことになるんだけど、過去3回毎回そうだもんな。3回とも患部はさほど問題無いのよ。それよりも喉なの。これと格闘してんのよ。今日は7日(日)だけど、今でもまだ痛いもんな。水もちょっとしか飲めないし。たまにむせるし。これが無ければ手術ってたいしたこと無いのかなとさえ思えてしまう。
話を戻すけど、術後、19時になったら起きていいですよと言われていた。19時になったので起きようとしたら、上半身を起こすと貧血ぎみになってとても起きることはできなかった。なので21時にまたチャレンジしましょうと言われてチャレンジしたけれど、またダメだった。結局は翌日の10時ころまで寝たきりだった。なので尿道カテーテルもそれまで刺しっぱなしでね、術後ほぼまる1日は不快極まりない状況だった。看護師さんが「麻酔かな…?」と言っていた。やっぱりそれなのかな。

今日の日記のタイトルには「~6日目」って書いたけど、なんだかずいぶん乱文だし疲れてきたからもうやめようと思う。当然ながら、もっといろんなことがあったんだけど。思い出したら小出しにして書くことにする。
ひとつだけ書いておくと、世の中に辛いことってたくさんあると思うんだけど、ステージ3の癌の手術のために入院するってのもその辛いことには含まれるんじゃなかろうかとは思える。一般的には。でもなんつーか、当事者である僕はさほど辛いとは思っていないというか、こんなことよりももっと辛いことってたくさんあるだろうなと思える。では僕にとって辛いことって何なのかってことを寝ながら考えてたんだけど、アレだね、僕の力の及ばぬところに起きることだろうなと。今回の手術&入院は僕の身に起きたことだからなんとでもなるんだけど、たとえばこれが僕の家族に起きたことだったら辛いと思うと思うの。苦しいっつーか。祈ることしかできないから。だから僕の妻や家族、そして心配してくれている友達には申し訳無いことをしたと思っている。ただ僕は本当に大丈夫だから。みんな知ってると思うけど僕には僕なりの死生観があって、そのことを心の底から信じ切っているし、信頼できる先生たちもいるし、僕は90歳まで生きることに決めたし、何よりも今は妻だけでは無く我が子もいる。妻と我が子と3人で、手をつないで近所を散歩したり、多摩川ぞいを歩いたり、お祭りに行ったり、大好きになった青森も見せてあげたいし。だから大丈夫なの、僕。だから辛いなんてことには構っていられなくて、この先が楽しみでしょうがない。そんな感じ。