写真を通して伝えたいこと問題

数日前、某有名写真家さん2名によるトークショーが行われた。そのトークショーに参加した知人によると、その写真家さんたちが質問されて一番困ることは「この写真を通して何を伝えたいですか?」だそうだ。伝えたいことなど無いらしい。それを聞いて「おお、いいねぇ。」と思った。写真の世界で名の知れた方々にそう言っていただけると、いい意味で肩から力が抜ける。そして昨日の午前中、それとは違う有名写真家さん2名によるトークショーの告知をたまたま目にしたけれど、そこには「写真を通して伝えたいこと」とのタイトルがあった。すごい、真逆のことを言っているぞと。
伝えたいことなど無いと仰っている2名の写真家さんと、それとは真逆の内容のトークショーを行う2名の写真家さんとは撮っているモノが違う。被写体もコンセプトも違う。だからこその言葉なのだろう。でもどんな写真であれ、撮影をして展示をしている以上は伝えたいことは存在するはずだとも思う。意図無く撮影をすることなんて無いと思う。何かを思ったから、そこに何かを感じたからシャッターを切っているわけで、さらには紙を選んでプリントをして展示までしているのだから、そこには写真家の意思が存在するはずだ。額や照明にだって意味があって然るべきと思う。それを言語化することはモノ作りをする人間にとって大切なことだと思う。

「伝えたいことなど無い」というのは、あの両名ならではの言葉だと思う。アウトプットされた「写真」という物質だけでは無く、当人の存在も含めてまとめて「作品」と呼べるような方々だからこその言葉だろう。だからその言葉を僕らアマチュアが「伝えたいことは無くてもいいんだ!」と鵜呑みにしてしまうのはちょっと違うと思う。「かわいいから撮った」「わっと思ったから撮った」でいいと思う。それさえあれば、そこから自然とイメージは広がって行く。短くても拙くてもいい。言葉で伝える努力は必要だと思う。